人間の首から腰にかけての骨は脊柱といって、小さな骨がいくつも積み重なって1本の棒になっているような構造になっています。
小さな骨は「椎体」と呼ばれ、その「椎体」と「椎体」の間にサンドイッチの具のような状態ではさまっているのが「椎間板」です。
おもにクッションの役目をしている組織なのですが、この「椎間板」の周囲を構成する「線維輪」という部分に亀裂が入って、中にある「髄核」というものが飛び出した状態が「椎間板ヘルニア」です。
首の部分におこる「頸椎椎間板ヘルニア」と腰の部分におこる「腰椎椎間板ヘルニア」がありますが、ここでは特に一般的な「腰椎椎間板ヘルニア」について述べさせていただきたいと思います。
「腰椎椎間板ヘルニア」は、腰にかかる負担や、重い物を持ち上げた際の加重、繰り返される腰への負担などによって起こります。
年齢別にみると、高齢者に限らずあらゆる年齢層で見られるとされており、男女均等にみられる傾向があります。
「椎間板」に亀裂が入ることから、はじめに強い腰痛が起こることが特徴的です。
その後、数日から2週間ぐらいの間に疼痛は徐々にお尻の部分から太もも、足の先の方へと広がっていきます。
飛び出した「髄核」という組織が背中にある神経を刺激するため、その神経の走行に沿って、痛みが走るためだと言われています。
特徴的な症状として「ラセーグ徴候」と言われるものがあります。
仰向けに寝た状態で、足を伸ばしたまま股関節を曲げていくと、痛みが走って足を挙げられなくなるという症状で、整形外科での診断に用いられます。
くれぐれも何の病気かわからないのに自分で試してみたりしないようにしてください。
また、座ったときにお尻や足の痛みが強くなる傾向があるのもこの疾患の特徴です。
そのため長時間の運転で、症状がひどくなったりすることがあります。
さらに症状が強ければ、足のしびれや感覚の麻痺、筋力の低下などの症状が起こる場合もあります。
ヘルニア自体が大きい場合には、排尿困難や病的な便秘、勃起障害などの症状が現れることもあります。
治療法は基本的には「保存療法」と言われる安静を基本とした治療になります。
それにお薬や牽引、コルセットの使用などを組み合わせ、場合によっては「硬膜外ブロック」という腰の部分への注射を行って、炎症を抑える治療が行われることもあります。
こういった治療方法でも効果がない場合や、早期の社会復帰を望む場合は、手術の適応となりますが、最近では「椎間板内療法」と呼ばれる「手術と保存療法の中間的な療法」も用いられています。
医師の説明をよく聞いて自分に合った適切な治療方法を選びたいものですね。